
スポーツと健康のためのヨーガは、気張らず、楽に動ける身体を手に入れるための第一歩です。「動ける身体」をつくる、「自分を自在にコントロールする」ためには、まず力を抜くこと、緩めることが大事です。ヨーガによって力を抜き、必要最小限の力で動作することを学ぶことができます。
体が硬い男性、肩こりや腰痛に悩まされている人、高齢になって体がスムーズに動かなくなってきた人こそ、ヨーガに親しんで、柔らかく楽に動ける身体を手に入れて欲しいのです。若い女性はもちらん、若い男性、そしてアスリートにもヨーガをお薦めします。筋力をつけるトレーニングは決して万能ではありません。野口体操の創始者である野口三千三は、『力を抜けば抜くほど力が出る』と言っています。
ヨーガは女性がするもの?
ヨーガというと、女性がヨガマットを肩にかけて、教室へ通う姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。確かに現代の日本では、ヨーガは女性に人気があり、ヨーガ教室も女性が多い傾向です。

丸めて筒状にしたヨガマットを肩にかけて、街中を闊歩する若い女性の姿は、ファッションの一部になっています。それは1990年代以降のヨガブームが、ハリウッドなどアメリカ西海岸でのヨガブームの影響を受け、ファッションとフィットネスを旗印に移入されてきたためです。
しかし、ヨーガの著名な指導者には男性がたくさんいます。現代のヨーガを確立したと言っても良い(ヨガマットを考案したのも)インドのB.K.S. アイアンガー師、日本へ「ヨガ」を紹介し普及した沖正弘(1921~85年)も男性です。
インド哲学者の佐保田鶴治は、大学を退官してからヨーガを実践し、虚弱体質を健康な体に変え、『ヨーガ入門』(1975年、池田書店)を書きました。
数は少ないですが、男性用のヨーガの本や、スポーツのためのヨーガの書籍も出版されています。まず「ヨーガは女がするもの」とか、「ヨーガは宗教である」などという誤った固定観念を捨てましょう。
ヨーガは姿を変えて生き残ってきた
ヨーガは時代と場所(国)によってその姿・形を多様に変えながら、生き残ってきました。あるときは宗教や神秘的な装いをもち、あるときは哲学や思想、修行や瞑想、健康法、欧米ではフィットネスや美容など様々です。
実体はあるけれど、その全体像をつかむのは容易ではありません。まるで「スライム」のようにつかみどころがないのです。スライムを知らない人には、アメーバのように姿を変えると言っておきましょう。
だからヨーガの全体像をつかむのではなく、「スポーツをする者にとって、または健康のために」、どんなヨーガを学ぶのが良いのかを考えてみましょう。

どんなヨーガを選ぶか それは何故か?
仏教の開祖である仏陀はヨーガの行者でした。ですから紀元前5~6世紀には、すでにヨーガがあったと考えられます。サンスクリット語で書かれた文献『ヨーガ・スートラ』は、紀元4~5世紀に成立したとされています。
ヨーガは3000年余りの歴史をもっています。インド国内だけでなく、海外へも大きな影響を与えてきました。
例えばヨーガの一部である瞑想は、禅や座禅として中国を通じて日本へも伝えられました。
1920年代にドイツ人ジョセフ・ピラティスによって考えられた運動療法であるピラティスも、ヨーガの影響を受けています。
1970年代に米国人ボブ・アンダーソンが考えたストレッチングにも、やはりヨーガの影響が見られます。
現代のヨーガは母国インドだけでなく、ヨーロッパ、米国をはじめ全世界で行われていると言っても過言ではありません。種類もたくさんあり、皆さんもパワーヨガ(注1)やホットヨガ(注2)という言葉を耳にしたことがあることでしょう。
注1:米国発祥の筋肉強化、パワーアップのためのヨーガ
注2:高温多湿の部屋で行われるヨーガ
ただ現代ヨーガの主流はほとんど(すべてではありませんが)、10~12世紀頃に成立したハタ・ヨーガを起源としています。そのハタ・ヨーガを、解剖学の知識を取り入れ、正確なアライメント(骨の位置、各部位の配列)を重視して完成させたのが、先に述べたB.K.S.アイアンガーです。
神秘的な「目に見えない何者か」ではなく、「目に見える身体の動き」を重視したヨーガです。ですからスポーツと健康のためのヨーガには、ハタ・ヨーガ、特にアイアンガー師とその弟子たちが発展させてきた「現代のハタヨーガ」を選び、学ぶことが良いのではないでしょうか。
ハタ・ヨーガの心得
★呼吸と動作が一つになっています。呼吸しながらポーズをします。ポーズは完成形、アーサナは完成までのプロセスで、手順に沿って完成形を目指します。
★いくつかのポーズの後に休みが入ります。休みは、自分の体との対話の時間です。動いた後の体の変化に気づきます。
★必ず反対の動きも行って、バランスをとります。右の次は左、上の次は下、前屈したら後へ反るなど。
★反動をつけたり、力まかせで動かず、力を抜くことを心がけます。必要最小限の力で動作し、ポーズができたら静止します。静止しているときは、自分の感覚に意識を向けます。
ストレッチ体操(静的)の源流はヨーガ
ところで読者のみなさんは、スポーツ前後の伸ばすストレッチ体操を当たり前と思っているのではないしょうか。
新体連(新日本スポーツ連盟の前身)が大きく成長した1970年代から80年代は、ストレッチ体操(スタティック=静的)が全国に普及した時期と一致しているからです。
ストレッチ体操には源流があります、それがヨーガです。ストレッチ体操はこれからも変化していくでしょうが、ストレッチ体操の未来を展望するにも、源流にあるヨーガをたどってみましょう。そこには数千年来の知恵が詰まっているのですから。
実際にヨーガを体験してみよう
ヨーガをしたことのない人や体がかたい人でも気軽にできる
ヨーガの初級メニューを紹介します。是非試してみてください。





ヨーガのポイント
呼吸を安定させ、身体から送られてくるメッセージを意識し、それに従って姿勢を整えてゆく。




ヨーガのポイント
いくつかのポーズの後に休みが入ります。
休み=自分の体との対話の時間
動いた後の体の変化に気づきます!






「スポーツのひろば」2022年12月号より
